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ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及に向けた社会的背景

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及に向けた社会的背景

 

地球温暖化防止に向け「ゼロ炭素社会」を目指す歴史的な合意となった国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の「パリ協定」。

わが国が公約した温室効果ガス排出量削減目標を達成するための具体案ともいえる「エネルギー革新戦略」が3月中にも公表される。

家庭部門の中心となるのが建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)の適合義務化とネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の普及。

今後、世界規模の政策の一環として強力に進められていくであろう住宅・建築物の省エネ施策の中心となるZEHについて考えてみた。

 ■世界規模の政策に
 

国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」は、2050年に産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑え、1・5℃を上回らないために努力する長期目標を掲げている。

温室効果ガスは、年間の排出量を可能な限り早期に減少に転じさせ、今世紀後半に人為起源の排出を正味ゼロにする。

加盟各国は2025(平成37)年または2030(平成42)年までの温室効果ガス削減目標を提出。5年毎に削減計画を見直し、より発展的な削減目標を提出しなければならない。

次の約束草案提出時期は2030年。2025年目標を提出した加盟国は2030年目標、2030年目標を提出している国は同年目標の見直しを図り、再提出する。

5年毎に温室効果ガス削減目標を更新し、それを継続していく国際的な枠組みが導入されたことによって、温暖化防止に向けた取り組みは世界的な合意の下で強力に進められていく。

 

わが国が公約した温室効果ガス排出量削減目標は、2030年度に2013(平成25)年比で26%削減すること。

目標達成の鍵を握るのが増え続ける民生部門のエネルギー消費の抑制。

住宅・建築物の省エネ施策は今後、産業振興や景気対策の域を超え、地球温暖化対策という世界規模の政策として工務店・ビルダーに降りかかってくることになる。
 

既存のZEH化も
 

約束草案達成に向けた具体案といえるのが3月中にも公表される「エネルギー革新戦略」。

エネルギーシステム改革とエネルギーミックスの実現を通じてエネルギー投資を拡大させることによって、エネルギー効率向上によるCO2排出抑制と、政府の成長戦略に掲げる国内総生産(GDP)600兆円達成に貢献させるのが策定の目的。

同戦略は①徹底した省エネ②再生可能エネルギーの拡大③新たなエネルギーシステムの構築―の3本柱。

家庭部門で「徹底した省エネ」を担うのが、建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)であり、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の普及。

 経済産業省の「ZEHロードマップ普及員会」が提出した、とりまとめ案ではZEHの定義や具体的な要件をまとめ、普及に向けたロードマップを示している。

 ZEHの具体的な要件のひとつが強化外皮基準で、1~2地域では平均熱貫流率(UA値)0・4W/㎡K。

一方、国土交通省が定める基準には省エネ基準以上の外皮基準が存在しないことから、例えば住宅性能表示制度を改正して、省エネ基準を上回る断熱等級を設定する可能性も。

エネルギー革新戦略では既築住宅のZEH化も視野に入っており、経産省の今年度補正予算に盛り込まれた「住宅省エネリノベーション事業」は、その布石といえそう。
 

家づくりの中心に
 

道内では積雪や日照時間などの問題があり、ZEH普及はやや停滞気味だが、関東以西では既に家づくりの中心になりつつある。

CO2の排出量に応じて化石燃料に課税する炭素税を導入しているイギリスでは、炭素税を強化する代わりに法人税を下げることによって、温室効果ガス排出抑制に一定の成果がみられるという。

我が国の省エネ政策はこれまで、諸制度に適合した住宅に対して建設補助や税制優遇などのインセンティブを与えることで普及を図ってきた。

今後は施策に対応できない事業者に対して炭素税のようなペナルティを与える方向に転換するとの見方もあり、ZEH対応に残された猶予は少ない。(北海道住宅通信から)

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